メンバーが目標に納得していないとき、必要なのは激励の言葉ではなく「達成できるイメージを持てる情報」の共有です。本記事では、EVeMの「マネジメント100の型」から、目標達成に向けてメンバーを鼓舞するコミュニケーション方法を3つの観点で解説します。
この記事でわかること
メンバーが目標に納得しない状態とは、多くの場合「達成のイメージを持てていない」状態です。目標そのものへの反発ではなく、達成までの道筋が見えないことが、後ろ向きな姿勢の背景にあります。
どんなやり方で達成できそうかが見えている状態と、まったく見通しが立っていない状態とでは、メンバーの動き方やモチベーションに大きな差が生まれます。だからこそ、気合いを促す声がけよりも先に、目標達成に向けた方針を丁寧に伝えることが重要です。メンバーが混乱している場合には、思考の整理のための対話を行うなど、"見通しを一緒に描く"関わり方が求められます。
EVeMはこれまで、数多くの経営者・管理職の皆さまにマネジメントの"やり方"のナレッジをお伝えしてきました。その知見から、メンバーを鼓舞するための方法を次の3つの観点で解説します。
与えられた目標に対して行動を考えようとすると、メンバーの頭の中には無数のアクションが思い浮かびます。その結果、「何をすればいいのか」が分からなくなってしまうことがあります。
どのアクションが有効なのか見えていない状態では、目標達成までの道筋も描けません。行動に迷いが生じ、目標への納得感も下がっていきます。
[図解: 目標から無数のアクションが広がり、メンバーが迷っている図(スライド7を再利用)]
一方、達成のためにどんなアクションを選択するのかという戦略方針が明確であれば、状況は変わります。そのアクションを実行して目標を達成する、という筋道に納得しやすくなるからです。戦略方針とは、ライトのように目標達成までの道筋を照らすものです。
現状と目標の間をつなぐのが戦略方針です。ポイントは、重要な内容を3つ程度に絞り込み、チームのリソースを集中させることです。
具体的には、次の2点を意識してください。
ポイントを絞ることで、メンバーが迷わず動ける状態をつくることができます。
目標に対して「どのように達成するのか」というHowの部分が欠けると、掲げられた目標に納得感を持てず、チームの疲弊を招く原因になりかねません。「2,000万円いくぞ!」と目標だけを繰り返しても、メンバーからは「だからどうやってやるのか」という反応が返ってくるだけです。
だからこそ、戦略方針と、それに基づくマネージャー自身の考えを丁寧に伝え、メンバーが腹落ちできる状態をつくることが大切です。
目標を「追うこと」自体を目的化させないためには、その目標を達成することにどんな意義があるのかを言語化して伝えることが大切です。
意義には、次の3つの軸があります。
メンバー一人ひとりのタイプや関心に合わせて、それぞれの軸で意義を言語化・整理し、伝えられるようにしておきましょう。
意義があることで、無機質だった役割や目標に意味が生まれます。メンバーはいきいきと働き、チームワークの質も高まります。
意義があるチームには、次のような特徴があります。
逆に意義が感じられないと、苦しいときに踏ん張る理由を失います。意義を感じないことに時間を使うことへの辟易からモチベーションが下がり、場合によっては退職につながることもあります。
意義の言語化は、部門ごとに具体例を参考にすると進めやすくなります。たとえばセールス部門なら、市場軸で「中小企業向けSFAで圧倒的No.1のポジションを確立する」、自者軸で「何人増えても質が高いセールスができる日本一のイネーブルメント実行チーム」といった形です。
マーケティング部門であれば、社会軸で「サービスの価値を1人でも多くの人に届ける」、自者軸で「最先端のマーケティング手法を試しつづけ、常に最高の知見を持つチーム」のように整理できます。
戦略方針も意義も理解できているのに、それでも目標に後ろ向きな場合があります。そのときは、1on1などの場で個別に「目標達成コーチング」を行うことをおすすめします。
目標達成コーチングが特に有効なのは、次の2つの場面です。
目標達成コーチングでは、以下の質問フレームを活用します。メンバーに目標と現状のギャップを認識してもらい、その差を自分自身のアイデアで埋めていくためのフレームです。
対話のゴールは、メンバーが「自分にもできるかもしれない」と感じ、前向きに一歩踏み出せる状態をつくることにあります。
「新規事業がなかなか思うように進まない」と悩むメンバーとの1on1を例に、フレームの流れを見てみましょう。
マネージャーはまず「どのような目標を設定していますか?」と目標を確認します。「今年9月に300社導入」という目標に対し、「300社という目標は、本事業にとってどのような意味がありますか?」と意味を深掘りします。次に「現状はどうでしょうか?」「何か壁はあるのでしょうか?」と現状とギャップを確認します。
さらに「すでに持っていて活用できるリソースは?」と問いかけ、メンバー自身に手持ちの資源(この例では既存20社の効果データ)に気づいてもらいます。そのうえで「どのような方針で達成していくのか」「方針を実現するためにどのようにアクションするか」を引き出し、最後に「この面談が終わったあと何をしますか?」と最初の一歩を具体化して締めくくります。
一方的に指示するのではなく、質問によってメンバー自身の言葉で道筋を描いてもらうことがポイントです。
Q1. メンバーが目標に納得しないのは、目標が高すぎるからではないですか?
A. 高さそのものより「達成のイメージを持てていない」ことが原因のケースが多くあります。まずは戦略方針を伝え、達成までの道筋を一緒に描くことで、納得感が変わるかを確認してみてください。
Q2. 戦略方針はいくつ示すのが適切ですか?
A. 重要な内容を3つ程度に絞り込むことを推奨します。数を絞ることでチームのリソースを集中させられ、メンバーが迷わず動ける状態をつくれます。
Q3. 目標の「意義」はどう考えればよいですか?
A. 「社会軸(どんな社会貢献か)」「市場軸(どんな市場の立ち位置か)」「自者軸(どんな自分たちになるか)」の3つで言語化します。メンバーのタイプや関心に合わせて使い分けるのが効果的です。
Q4. 目標達成コーチングはどんなときに行うべきですか?
A. 目標達成の方法が曖昧なときと、業務過多で何から手をつけるべきか混乱しているときに有効です。1on1の場で質問フレームに沿って対話し、メンバー自身の言葉で道筋を描いてもらいます。
目標達成に向けてメンバーを鼓舞するコミュニケーションの要点は、次の3つです。
次のアクションとして、まずは自チームの戦略方針が3つに絞れているか、意義を3つの軸で言語化できているかを確認してみてください。