「マネージャー1人で、メンバー何人まで見られますか?」
PIVOTで話した「マネジメント技術大全」第3回。私がこの問いから始めたのには理由があります。チームが機能しない、メンバーが育たない、意思決定が遅い――この手の悩みのほとんどは、マネージャーの能力ではなく、チーム体制の設計ミスから来ているからです。
体制は気合では補えない。ここを言語化しないまま「がんばれ」と言い続けるマネージャーが、本当に多い。今回は、「チーム体制の設計図」を共有します。
チーム体制は『構造×配置』で決まる

私はチーム体制を、こう定義しています。
構造×配置=チーム体制
組織図を眺めて満足してはいけません。「箱がある」ことと「機能している」ことは別物です。誰がどのレイヤーで何を意思決定するのか、誰のWillとCanがどこにハマるのか。この2軸を同時に設計してはじめて、チームは動き始めます。逆に言えば、ここを曖昧にしたまま施策を打っても空振りします。
まずは構造の話から行きます。
立ち上げ期の最強型―文鎮型

スタートアップやチーム立ち上げ期で一番強いのは、この文鎮型です。マネージャーがメンバー全員を直接見る。階層が薄いから、意思決定~実行~振り返りが、とにかく速い。私自身、立ち上げ期はこの型を選びます。
ただし、限界がある。経験上、マネージャー1人で直接見られるのは7人前後が上限です。それを超えると、必ずどこかが落ちる。1on1の時間が確保できない、メンバーの状態を把握しきれない、重要なチャンスやリスクを見逃す。マネージャーがキャパオーバーになり、チームが機能不全に陥る――これが文鎮型の典型的な崩れ方です。
「うちのマネージャーは頑張りが足りない」のではありません。
型の寿命が来ているだけです。
人が増えたら構造型へ

そこで次に来るのが構造型。マネージャーの下にチームリーダーを置き、リーダーがメンバーを束ねる。階層が一段増える分、人数が増えても機能しやすい。20人、30人と組織が膨らんでも、同じ仕組みで回せます。
トレードオフはスピードです。マネージャーが直接判断していた意思決定が、リーダー経由になる。情報伝達も一段増える。だから「文鎮型のスピード感が好きだった」という人ほど、移行に抵抗します。が、ここで踏ん張れないと、人数だけ増えてチームは止まる。構造型は『遅くなる』のではなく、『遅くしてでも回せるようにする』ための設計だと捉えてください。
問題は、いつ・どう移行するか。これが多くのマネージャーが詰まるポイントです。
文鎮型→構造型への移行プロセス

過度な文鎮型(8人〜)はよく起こりがちです。その時は、補佐スタッフ配置 or 一部構造型で過度な文鎮型をなんとかマネージしながら構造型に移行します。いきなり構造型に飛ぶ必要はありません。
特に効くのが補佐スタッフ配置です。チームリーダーを立てる前段階として、マネージャーの補佐になる役割を1人置く。数値管理、アクション管理、メンバーの工数管理、一部の会議の参加・進行、報告資料の準備、承認―こういうマネジメント周辺業務を引き取ってもらうだけで、マネージャーのキャパは劇的に空きます。
「リーダー候補がまだいない」「いきなり階層を増やすとメンバーが戸惑う」というフェーズで、補佐スタッフ配置は強力です。組織を壊さずに、文鎮型の限界をひと回り押し広げられる。いきなり完成形を目指すのではなく、段階的に移行する。これがチーム体制設計の基本動作です。
構造型で頻発する「階層飛ばし」

構造型にするとよく起こるのが、階層飛ばしです。リーダーBの配下にいるメンバーが、Bを飛ばして、マネージャーAに直接「Bさんありえないです」と訴えに来る。
ここでAが「なるほど、注意するね」と引き取った瞬間、終わりです。個別最適では問題解決に見えるかもしれない。でも全体で見ると、Bは「信用されてない」と感じ、メンバーは「そういうBを指名するAってなんなのだろうか」と疑い、結局AもBも、つまり会社として最悪だという認識になります。そしてCは絶望します。
正解はこうです。メンバーにBへの信頼を伝えた上で、Bにメンバーの意見を伝え、Bに今後の対応を考えさせる。Aがやるべきは「直接対応」ではなく「Bがその課題に向き合えるよう設計し直すこと」。リーダーを置いた瞬間、マネージャーの仕事は「メンバーを動かす」から「リーダーを動かす」に変わります。ここを切り替えられないと、構造型は機能しません。
ここまでが「構造」の話。次は「配置」、つまりアサインメントの話に入ります。
Willはなぜ聞くのか

メンバーをどこに置くか。私はシンプルに、意欲(Will)×スキル(Can)=成果で考えます。
ここで誤解してほしくないのは、「Willを聞く」ことの目的です。〇は成果を最大化させるアサインメントを実現するために聞く。×は目的もなく聞く/人としての善意で聞く/辞めて欲しくないから聞く。

聞き方にもセリフがあります。「あなたにお願いしたい業務は最終的には私が決めます」と最初にはっきり伝えることが何よりも重要です。あなたの願いを叶えるために聞いているのではないと伝え、メンバーと認識を揃えます。
そのうえで、聞いたWillをどう活用するか。私が使っているのが、この4象限です。
アサインメントは4象限で考える

縦軸にWill、横軸にCan。これで4つのアサインパターンが見えてきます。
最適アサイン(Will高×Can高)
ポテンシャルアサイン(Will高×Can低)は
淡々アサイン(Will低×Can高)
絶望アサイン(Will低×Can低)
絶望アサインはでは人は去るので、このアサインは行いません。
特に扱いが難しいのが淡々アサインです。ここを雑に扱うと、組織はもたない。
3つのうち、どれらを活用して向き合います。
①あなたにしかできないと「お願い」する+有期で、100%をこのアサインにしない
②できると思っている仕事でもまだまだ工夫の余地があることを示す
③希望通りの仕事ができない理由と、淡々アサインを通じて成長すべき課題をセットで提示する。
淡々アサインの相手こそ、丁寧なコミュニケーションが効きます。
長くなりましたが、最後にもう一度。チーム体制とは、構造×配置です。状況に合った構造を選び、メンバーのWill×Canを見ながら配置する。それだけです。
「うちのチームが機能しない」と感じている方は、人を責める前に、まず設計図を疑ってください。型を変えるだけで、チームの動きは劇的に変わります。動画ではこのあたりをもっと踏み込んで話しているので、よければ合わせてどうぞ。
AI時代のマネジメントは「超文鎮型」になる
ただし、ここまで話しておいて何だが、この前提は近いうちひっくり返るかもしれません。マネージャー1人で見られるのは7人が上限――これは「人をマネジメントする場合」の話です。
AIに補佐スタッフを任せて、何十、何百というAIを1人で使いこなすマネージャーが、これから当たり前に生まれると思います。いわば「超文鎮型」。
文鎮型の弱点だった「キャパオーバー」は、AIがレバーになって突破される未来がそこまで来ていると思います。
人をマネジメントする時代から、AIをマネジメントする時代へ。このパラダイムシフトにも、敏感でありたいと思っています。本記事で語った『構造×配置』のフレームも、対象が人からAIに変わったとき、どう書き換わるのか――そこを考え続けるのが、これからのマネージャーの仕事になるはずです。

