株式会社EVeMは2026年2月、コングレスクエア日本橋にて、EVeM主催のカンファレンスイベント「マネジメント変革サミット2026」を開催しました。
当日は、組織論・経営戦略論を専門とする大学院教授から、日本を代表する企業の人事責任者や事業部長まで、さまざまな立場の登壇者が「これからの組織に求められるマネジメント」について語りました。
本レポートでは、5つのセッションの様子をハイライトと写真とともに振り返ります。
1.Keynote Session
基調講演となるセッションは、EVeM CEO 長村 禎庸によるコメントから始まりました。
「不安定な事業・組織」「限られたリソース」「変化の激しい環境」。
こうした状況下で戦うスタートアップの経営者やマネージャーを支援するため、EVeMはマネジメントナレッジの提供を目的に事業を立ち上げました。
創業から5年半が経過した今、これらの課題は「スタートアップに限ったものではなくなっている」と長村は語ります。
「私たちは今、マネジメントを変える必要がある」
その言葉を合図に、会場に集まった参加者とともに「マネジメント変革サミット」が幕を開けました。


長村によるオープニングピッチ「マネジメントの型とは何か」では、EVeMが提唱する基本的な考え方が紹介されました。
それは、マネジメントは経験やセンスだけで身につけるものではなく、「やり方=技術」として学ぶことで誰でも実践できるようになるというものです。
EVeMでは、この再現可能なマネジメント技術を「マネジメントの型」と呼んでいます。

長村のピッチを受け、約20年前から日本の管理職を苦しめる「多重責務問題」を自著『中堅崩壊』でも提起してきた、明治大学専門職大学院 グローバル・ビジネス研究科 教授の野田 稔氏が、現代のミドルマネージャーを取り巻く状況について語りました。

現在は専任マネージャーよりもプレイングマネージャーが主流となっており、管理職を巡る問題は「新・中堅崩壊」と呼べるほど深刻化しているといいます。
多くの日本企業が30年間にわたり人材育成への投資を十分に行ってこなかった一方で、社会や事業環境の変化のスピードは加速し、マネジメントに求められる要件はますます複雑になりました。
こうした状況に対応するためには、「マネジメントを再現性のある『科学』へと高めていかなければならない」と野田教授は指摘しました。

続いて、モデレーターの滝川を交えたトークセッションが行われました。
少子高齢化が進み、日本が「課題先進国」とも呼ばれる中、AIとマネジメントを掛け合わせることで世界に先駆けた変革を起こすことは可能なのか。滝川はその可能性について問いかけます。

野田教授は、リクルートワークス研究所の調査を引き合いに、「2040年には労働力人口が1100万人不足する」と言われている現状を紹介。今こそイノベーションが起きなければ社会が回らなくなる状況が目前に迫っていると指摘しました。
しかし、イノベーションは自然に生まれるものではありません。
だからこそ、そこにマネジメントが介在する必要があると投げかけました。

一方で長村は、「マネジメントを“科学”として整理し、本質的なことに時間を使える状態をつくる必要がある」と語りました。
野田教授は、「効率化」という言葉に抵抗を示す人もいると指摘しながら、フィギュアスケートを例に挙げます。オリジナリティのある演技が生まれるのは、基本の「型」があるからこそ。
マネジメントを科学として整理した「型」を学ぶことは、“型にはまる”ことではない。むしろ、マネジメントを自由にするための創造性を生む土台になる。
そうしたメッセージでセッションは締めくくられました。
2.採用×カルチャー×マネジメント
続いて、採用難が常態化する現代において、組織の競争力を左右する「入社後の定着・活用」にフォーカスしたセッションが行われました。

採用や受け入れを巡っては、人事と事業部の間で課題が指摘され続けてきました。こうした課題は、時代の変化と共にどのように変わっていくのでしょうか。
本セッションのモデレーターはワンキャリアEvangelistの寺口 浩大さん。日本の採用の「変革」を掲げている第一人者です。


セッションの冒頭でトイトイ合同会社の永島 寛之さんは「入社3年以内の離職だけでなく、入社半年以内の早期離職が増えている」と指摘します。
また、かつては「仕事についていけない人」が辞めるケースが多かった一方で、現在は「この環境では成長できない」と感じた、優秀な人材から離れていく現象が起きているといいます。

こうした状況の中で永島さんが問題視するのが、「採用はマネジメントの外側にあるもの」という従来の捉え方です。本来、採用は事業戦略や経営戦略と連動する重要な意思決定であり、誰を採るのかという人材ポートフォリオの設計こそが戦略であると語りました。
そのうえで永島さんは「採用は単なる人員補充ではなく、すでにマネジメントの第一工程である」と強調。

メルカリ執行役員CHRO、宮川愛さんは、採用において最も重要なのは入り口となるペルソナ設定や要件定義だと語ります。

一方で、近年は採用競争の激化もあり、待遇や福利厚生といった条件面で人を惹きつけようとする動きも少なくありません。
しかし宮川さんは「金銭や制度だけを理由に入社した人は、より良い条件があれば離れていきやすい」と指摘します。
だからこそ、会社の価値観をきちんと伝えたうえで、その考え方や本質に納得できるかをすり合わせることが重要だと語ります。
①会社として何を提供できるのか、②そして本人に何を期待しているのか。
この2つを徹底的に言語化することが、採用においても、入社後の活躍支援においても欠かせないと強調しました。
3.大企業セッション
続いて大企業にのしかかる「見えづらいマネジメント負荷」をテーマに、日本を代表する企業の登壇者によるセッションが行われました。

本セッションのモデレーターは、旭化成の三木 祐史さん。
「大企業」の組織開発に携わる立場から、登壇者の議論を引き出していきます。

まずは、NECの原口 敦史さんからお話を伺います。
原口さんは、自身が事業責任者を務めるミドルウェア開発組織におけるマネジメント課題について語りました。

NECは「第3の創業期」を迎え、ICT中心のビジネスから、自ら社会価値を創出する企業への転換を進めています。
その中で原口さんの組織も100名から約300名規模へと急拡大。組織統合が続く中で文化や言葉の違いから共通言語が生まれにくく、マネージャーも既存事業の対応に追われる状況に。
そんななか、組織内で行ったアンケートでは、約75%のマネージャーが「自分のマネジメントに自信が持てていない」と回答。事業マネジメントには型がある一方で「人材や組織のマネジメントには共通の型がなく、何をすればよいのか分からない状態だった」と振り返ります。

そこで統括部の「共通言語」として導入されたのがEVeMの「マネジメントの型」でした。
研修に加え、マネジメントサーベイをもとにした振り返りなどを継続することで、現在では約6割のマネージャーがマネジメントに自信を持てるようになってきているといいます。
原口さんは、取り組みを進めるうえで「とにかくオープンに進めること」を意識し、管理職だけでなくメンバーにも情報を共有しながら組織全体で学ぶ姿勢を大切にしていると語りました。

続いて、東急建設株式会社 国際事業部の小西 雅和さんから、海外インフラ事業の現場におけるマネジメントのあり方についてお話しいただきました。
同社の国際事業は東南アジアのODAインフラ工事が中心で、ミャンマーの鉄道工事ではクーデターに直面するなど、不確実性の高い環境でプロジェクトを進めています。国内の現場とは異なり、ルールや前例に頼ることができないため、最終的な判断は常に個人に委ねられる状況にあるといいます。
こうした環境の中で現場が柔軟に対応できるよう、小西さんが重視しているのが「誠実さ」だといいます。

現場にとっての「誠実さ」はプロジェクトを無事に完遂することですが、組織としてはそこに「透明性」が加わります。現場から厳しい報告が上がった際にも責めるのではなく、「共にどうするか」を考える組織でありたいと語りました。
そのうえで小西さんは、判断の拠り所をルールだけに求めるのではなく、一人ひとりが自分なりの判断軸を持つことが重要だと指摘。その思考を支えるツールとしてEVeMの「100の型」に期待を寄せ、海外の現場と本社をつなぐ共通言語として活用していきたいと述べました。
4.女性管理職育成
次世代女性リーダー育成という大企業共通の課題に対し、三井情報のDEI推進と、JR東日本の越境コミュニティという2つの先進事例が紹介されました。
女性リーダーの育成を企業はどのように設計・実装しているのか。その実態に迫ります。

本セッションのモデレーターは、株式会社チェンジウェーブグループ 執行役員の鈴木 富貴さん。
組織開発やリーダー育成を支援する立場から、アンコンシャスバイアスの可視化などの知見を踏まえつつ、女性リーダー育成の取り組みをどう組織変革につなげていくのかという視点で議論を深めていきます。

まずは三井情報副社長の曽我部 和彦さんから、次世代女性リーダー育成に向けた経営層の意識改革について展開されました。

同社では新卒採用の男女比がほぼ半々である一方、女性管理職の割合は依然として1割未満にとどまっており、意思決定層には女性役員がほとんどいない状況にあるといいます。
こうした状況を受け、曽我部さんはジェンダーダイバーシティを経営レベルの課題として位置づけ、経営層自身の意識改革から取り組みをスタート。経営会議での継続的な議論や外部有識者との対話、ワークショップ、女性管理職との1on1などを通じて、経営メンバー同士が本音で議論する場を重ねてきました。
その結果、経営層の意識にも変化が生まれ、女性管理職との1on1を通じて、前向きな反応や対話の深まりが見られるようになりました。
曽我部さんは「本気の意識改革が女性リーダーの成長を後押しする」と述べ、経営層自らが向き合い続けることの重要性を強調しました。

JR東日本の小西 好美さんは、同社で立ち上げた社内ベンチャー事業として、女性のキャリア継続を支援するコミュニティ「PeerCross(ピアクロス)」の取り組みについて紹介しました。
PeerCrossは、社外のワーキングマザー同士が1対1の対話や座談会を通じてキャリアやライフについて相談できるコミュニティです。小西さん自身も、出産後にキャリアが停滞する「マミートラック」を経験した一人でした。フルタイムで復職したものの、育児による時間制約の中で思うように働けず、キャリアに悩む時期があったといいます。
そうした経験から、同じ境遇の人が社外で気軽に相談できる場の必要性を感じ、社内ベンチャーとしてPeerCrossを立ち上げました。

取り組みは3年目を迎え、現在は約40社が参加。参加者の約8割が何らかの前向きな行動を起こしており、昇進試験への挑戦や新たな業務へのチャレンジにつながるケースも生まれているといいます。小西さんは、女性がキャリアを分断せず成長し続けるためには、こうした心理的な支援やコミュニティの存在が重要だと語りました。
5.AI時代のマネジメントと「構造化力」
最後のセッションは、年々注目度が高まっているAI時代のマネジメントについて。
AIが同僚のように職場で共存する時代には、人間が「考える」存在であることがこれまで以上に問われます。物事に構造を与え、暗黙知に言葉を与える「共通言語化力」と「構造化力」について議論が交わされました。


うねりの豊間根 青地さんは、「型」とは仕事上の特定の場面で問題を解決するためのベストプラクティスであり、単なるテンプレートではなく思考や行動の指針となるフレームワークや共通言語のようなものだと説明しました。
例えば資料作成では、「聞き手・メッセージ・起こしたい変化」を整理する「キメヘン」という型があります。こうした型を意識することで、伝えたい内容が曖昧になることを防ぎ、相手の行動につながるコミュニケーションを設計できるといいます。

さらに豊間根さんは、良い型には「シンプルで覚えやすい」「印象に残る言葉である」「行動が定義されている」という三つの特徴があると指摘。
語感のよい言葉で共通言語化することで、組織のコミュニケーションコストを下げる効果があると語りました。
続いてEVeM CEOの長村が、「型」の考え方について解説しました。
長村は、型とは「利用シーンが明確で、入力情報が整理されており、そこから次のアクションの方向性が導けるもの」だと説明します。事象を理解するためのフレームワークと、行動を生み出すためのフレームワークは異なり、EVeMが「型」と呼んでいるのはアクションの生成に繋がるものだといいます。
型を作る際には、まず対象となる業務シーンを具体的に特定し、その場面で起こりがちな問題を言語化することが重要です。そのうえで、誰かの実践の中でうまく機能した方法を抽象化し、再現可能な行動として整理していくと語りました。
長村は、こうした抽象化のプロセスを通じて型を作ることで、個人の経験や暗黙知を組織で共有できるようになると指摘。型は、実務を再現可能にするための仕組みであると述べました。
最後に、本イベントの司会を務めた新保 友映さんをモデレーターに迎え、「AI同僚時代に求められるリーダーの力」をテーマに議論が行われました。
長村は、AIを活かすうえで重要なのは、人間が「何を依頼するのか」「何を相談するのか」をディレクションする力だと指摘します。物事の全体像を捉え、どこを切り取るかを判断する力は人間の役割であり、その切り取り方次第でAIの働き方も大きく変わると語りました。
一方、豊間根さんは、AIによって大量のアウトプットが生まれる時代だからこそ、本当に重要な部分を見極めて「ピン留め」する力、すなわち型を作る力が重要になると説明します。また、遊び心やユーモアといった、人の心を動かす要素はAIには代替しにくい、人間ならではの強みだと述べました。
参加者の約95%が「満足」「大変満足」と回答。盛況のうち、幕を閉じる
今回のイベントでは参加者アンケートを実施し、約6割の方から最高評価の「大変満足」をいただきました。「満足」を含めると、約95%の方にご評価いただく結果となりました。
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■満足度
大変満足:59.6%
満足:35.1%
以下:5.3%
■参加者の声(抜粋)
「思考の整理がしやすくなった。マネジメント強化していくフェーズにつき、アプローチ方法について想像以上に刺激をもらえました」
「学んで終わりでなく、実践に落とし込めるような内容だった」
「様々な会社のリアルな実例を聞けた」
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多くの皆さまから高い評価と温かいコメントをいただき、運営チーム一同、心より御礼申し上げます。
EVeMはこれからも、「すべてのチャレンジに、マネジメントの力を。」というパーパスのもと、マネジメント変革に挑むすべての企業に伴走してまいります。
改めまして、今回ご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました!


