はじめに
EVeM代表の長村禎庸は2026年8月、仙台市経済局の管理職の皆さん約40人を対象に「複雑化するマネジメントに対処する“技術”」をテーマとしたワークショップを、宮城県仙台市の仙台市役所で開催しました。
地方自治体の現場でも、人手不足、中途採用の拡大、世代による価値観の違いなど、管理職を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。約2時間の研修は、テーブルごとのディスカッションとEVeMの「マネジメントの型」の解説を行き来する形で進みました。本レポートでは、その様子をお伝えします。
「マネジメントというと、経験やセンス、人間力でやっていくものというイメージがあると思います。でも私はそうは考えていません。誰もが習得でき、実践できる技術があります」
冒頭、長村はこう語り、この日のゴールを「よく起こるケースについて、解決するための技術を実践できるレベルで理解できている状態」と掲げました。
では、マネジメントの「技術」とは何かーー。
EVeMでは、マネジメントを「誰が何を決められるかを権限設計表で明確にする」といったように、シートやセリフのレベルまで落とし込みます。経理の業務にマニュアルがあるように、マネジメントにも業務マニュアルがあっていいはず。これがEVeM創業の原点でもあります。
長村は「正解が見えていた時代には、管理職やリーダーにただ従うという上意下達で済んだが、今は違う」と続けます。
「不確実な状況ではチームが揺らぎます。そのときに技術があればチームを率いられるし、なければチームが壊れてしまうこともあるのです」

管理職が直面する業務過多や働き方や考え方の多様化は、企業も自治体も共通する点が多くあります
1.業務整理は「何を任せるか」の見極めから
最初の問いは「とにかく忙しい中、業務整理をどうしていますか?」
多くのマネージャー、管理職が直面する「業務過多」や「時間がない」問題に真正面から取り組みます。
ここで紹介したのが「権限委譲の型」です。マネージャーの業務は「決める」と「実行する」の2つに分けられること。決める業務は「後戻りしにくいか」「影響が大きいか」で、実行する業務は「重要度」と「自分がやると結果が変わるか」で整理します。
職員の評価は手放さない一方、送別会の店選びは任せていいし、出ても出なくても結果が変わらない定例会議は「議事録だけもらう」でいい、という具合です。
それでも任せられないときの目安も2つ示しました。
1つ目は、比べる相手を間違えないこと。「自分が120点、任せる相手が80点でも、その業務の合格点が80点ならOK」。2つ目は、任せる前に撤回条件を決めておくことです。
ただし期限や数字で区切ると過度なプレッシャーになり、最悪の場合は不正の原因にもなります。「市民の声をきちんと聞けていないと判断したら担当を外す」といった例から「必要な能力を条件にするのがポイント」だと、長村は解説しました。
2.「何のためにやるんですか?」は反抗ではない
研修でいちばん時間を割いたのが「自走しないメンバーをどう動かすか」です。業務指示に理由を求めるメンバーに、どう対処するのが良いでしょうか。
長村は自らの世代を振り返り「私が社会人になった頃は、ネットといえばYahoo!くらい。なぜかを調べる手段がなかった」と話します。一方、今の20代は、疑問があればSNSやウェブですぐに調べられる環境で育ってきました。
それゆえ目的の説明がない指示は「思いつきの命令」に聞こえ、「自分を下に見ている」という不信感にもつながります。逆に、目的を一言添えるだけで「役割が違うだけで、あなたとは対等だ」というメッセージになると、長村は指摘します。

指示は「目的・業務内容・業務要件・参考情報・具体的なやり方」の5段階で構成されます。指示が守られないときの理由は「目的がわからない」「やり方がわからない」「キャパシティがない」の3つと長村は解説。この「指示の深度の型」を活用することで、対応することが大切だと説明しました。
3.厳しい指摘がしづらい時代に、大事なことを伝える
普段、改めてマネジメントについて考える時間はなかなか取れない皆さんの話は尽きません
最後のテーマは「厳しい指摘がしづらい時代に、それでも大事なことを伝えるには」。
長村は、どれだけ権限を委譲しても絶対に手放してはいけない手綱として「目標を要望し、評価すること」を挙げました。これを手放すと、指示を聞く必要のないメンバーを組織の中に生んでしまいます。
評価に納得しないメンバーとの水掛け論を避けるカギは、行動事実の記録です。
3日に1回、5分でも評価に関わりそうな事実をメモしておく。そして評価結果は、事実に基づいて、文章にしたためます。長村はこれを「評価ギフト」と呼びます。「毎週1時間の面談を頑張るより、ここに時間をかけた方がずっとレバレッジが効く」と、その重要度を強調しました。
質疑応答の後、長村はこう締めくくりました。
「マネージャーが偉い人で、メンバーを従属させる。そうしたマネジメントは、人材が流動化する今の時代には通用しません。マネージャーとメンバーは役割の違いです。権力を振りかざせないなら、技術で動かすしかありません」
マネジメントは経験やセンス、ましてや地位や権力ではなく、技術によって必ず向上するとEVeMでは伝えています。スタートアップで培われた再現性のある技術は、自治体という組織でも、明日からの現場で生かせると実感いただけたのではないでしょうか。
今後もEVeMは、官民を問わず、すべての挑戦する組織のマネジメント支援に取り組んで参ります。
