メンバーの「やりたいこと(Will)」を1on1で引き出す第一歩は、質問の工夫ではなく、マネージャー自身の自己開示です。本記事では、EVeMの「マネジメント100の型」から、Willを引き出す聞き方と場づくりの方法を解説します。
この記事でわかること
- 「やりたいことはない?」と聞いても本音が出てこない理由
- Willを引き出す2つの聞き方(フォアキャスティング/バックキャスティング)
- メンバーが安心して話せる「場づくり」のコツ
Willを引き出す第一歩は、マネージャーの自己開示
1on1を実施していても、会話が「業務の進捗確認」や「業務指導・フィードバック」に偏り、メンバーの「やりたいこと」を引き出せていないのは、よくあるケースです。
とはいえ、「やりたいことはないの?」といきなり尋ねても、本音はなかなか出てきません。まだ十分に信頼関係ができていない相手に、自分の将来のビジョンでもある「やりたいこと」を話す人は多くないからです。とくに評価者である上司に対しては、"どう見られるか"を意識してしまい、「上司が望んでいそうなWill」を答えてしまうことも少なくありません。
やりたいことを引き出したいなら、まずはマネージャー自身が、自分の考えや"やりたいこと"を語る自己開示から始めましょう。上司が先に心を開くことで、メンバーも安心して本音を話しやすくなります。
信頼関係づくりの基本は、次の"信頼関係3点セット"です。
- 自己開示する
- 全身全霊、全人格を持って相手の話を聞く
- 教えてもらう
表面的なコミットはすぐに見透かされます。やるなら"本気で""心から"実践することが前提です。そのうえで、1on1を"進捗確認の場"ではなく"成長を支援する場"として活かしていきましょう。
[図解: 信頼関係3点セットでメンバーと感情でつながる図(スライド7を再利用)]
観点1|Willを引き出す「聞き方」を知っていますか
メンバーのWillを引き出す聞き方には、大きく2つのアプローチがあります。
聞き方①フォアキャスティング:過去の喜びから未来を描く
フォアキャスティングは、過去の経験を振り返りながら将来の"ありたい姿"を思い描いてもらう聞き方です。手順は次の3ステップです。
- 過去どんな時に喜びを感じたかを聞く(過去の活動を振り返ってもらう)
- 喜びの記憶を踏まえ、将来何をしたいかを引き出す(喜びを思い出した状態で聞くことで、Willが出やすくなる)
- 2から逆算して、直近は何をしたいかを引き出す(出てこない場合はマネージャーから提案する)
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聞き方②バックキャスティング:制約を外した理想から逆算する
バックキャスティングは、「ハワイに住みたい」「億万長者になりたい」といった理想の未来像を、時間や場所の制約を取り払って自由に描いてもらう聞き方です。
- 10年後どうなっていたいかを聞く(時間の制限を解除する。仕事で思いつかない場合はプライベートの理想を聞き、空間の制限も解除する)
- 1を実現するために3年後・1年後は何をするかを聞く(遠い未来から徐々に現在に近づける)
- 2から逆算して、直近は何をしたいかを引き出す(出てこない場合は提案する)
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どちらの聞き方も、直近のアクションまで落とし込んで初めてキャリア支援につながります。メンバーのタイプに合わせて使い分けてみてください。
観点2|メンバーが話しやすい「場づくり」はできていますか
立ち位置を「上司」から「コーチ」に切り替える
これまでの1on1が業務の話中心だった場合、急にWillを引き出す対話に切り替えるのは、双方にとって難しいものです。
そんなときは、自分の立ち位置を「上司」から「コーチ」に切り替える意識を持つことが大切です。1on1の冒頭で「今日はコーチとして、あなたの話を聞かせてください」と一言伝えるだけでも、会話の空気は柔らかくなります。
あわせて、次の3つのコーチングマインドを意識しましょう。
- メンバーへの愛情
- 相手の気づきを重視
- 評価・判断しない
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座り方やタイトル設定などの小さな工夫
安心して話せる雰囲気づくりには、小さな工夫も効果的です。オフラインであれば正面ではなく少し斜めに座る。正面は相手との間に一線を作りやすく、斜め横は自分の世界に相手を招き入れやすくなります。
オンラインの場合は、いつもの1on1とは違うタイトル(例:「雑談」)でカレンダーを設定する、画面をやや横にずらして他作業をしていないことを示す、といった工夫で相手の緊張を和らげられます。
"相手の世界に集中"し、答えはメンバーに委ねる
聞き手としての姿勢も、話しやすさに大きく影響します。基本のスタンスは**"相手の世界に集中"する**ことです。PCやスマートフォンを操作しながら聞く姿勢では、メンバーは「きちんと向き合ってもらえていない」と感じてしまいます。
また、メンバーがうまく答えられなくても、無理に答えを導き出そうとしないことが大切です。導こうと意識しすぎると尋問のようになり、相手も答えを見つけられなくなります。「自分がWillを引き出す」と意気込むよりも、「メンバー自身がWillを見出す過程を支援する」つもりで、そっと委ねましょう。
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よくある質問
Q1. 何を試しても「自分にはWillがない」と言われます。どうすればよいですか?
A. Willがないことも、その人の価値観として受け入れて支援しましょう。Willはゼロから突然生まれるものではなく、「できること・できて楽しいこと」というCanの積み重ねから育つものです。まずは今の業務からCanを積み上げる支援を行い、その先にWillを見つけられるようにするのが有効です。
Q2. フォアキャスティングとバックキャスティングはどう使い分けますか?
A. 過去の経験に手応えがあるメンバーには、喜びの記憶から掘り起こすフォアキャスティングが向いています。現状の制約にとらわれて発想が広がらないメンバーには、制限を外して理想から逆算するバックキャスティングを試してみてください。
Q3. 1on1で仕事のWillが出てこないときは?
A. プライベートでの理想を聞き、空間の制限を解除するのが有効です。遠い未来や仕事以外の理想から話し始めることで、本人の価値観が見え、直近やりたいことへの逆算がしやすくなります。
Q4. Willを聞くと「評価に響くのでは」と警戒されます。
A. 評価者である上司には「望まれていそうなWill」を答えがちです。冒頭で「今日はコーチとして聞く」と宣言し、評価・判断しないマインドで臨むことで、本音を話しやすい場をつくれます。
まとめ
1on1でメンバーの"やりたいこと"を引き出す要点は、次の3つです。
- いきなり質問せず、まずマネージャー自身が自己開示して本音を話せる関係をつくる
- 聞き方はフォアキャスティング(過去の喜びから)とバックキャスティング(理想の未来から)の2つを使い分ける
- 立ち位置を「コーチ」に切り替え、相手の世界に集中し、答えはメンバーに委ねる
次の1on1で、まずはご自身の"やりたいこと"をひとつ話すところから始めてみてください。
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