はじめに
「もうマネージャー辞めたい」
そう思ったことは何度もあります。
たとえば、評価面談で低い評価を伝えたところ、メンバーの表情がすっと曇っていた。その瞬間がフラッシュバックして、布団に入っても目が冴え眠れなかった。みたいなことは日常茶飯事ですよね。
深夜にスマホで「マネージャー 向いてない」と検索したことがある方はきっと少なくないはずです。
世の中にはリーダーシップ論や成果管理のノウハウがあふれています。
しかし「マネージャー自身の気持ちが折れそうなとき、どうするか」は驚くほど語られていません。
まるで、マネージャーは折れないのが前提、強いのが当たり前、とでも言わんばかりです。
しかし、マネージャーだって人間です。嫌われるのは怖いし、批判されれば傷つきます。
本記事では、嫌われる覚悟を「気合い」ではなく、再現可能な「技術」と「心得」で支える方法について書きます。
批判されないマネージャーは、仕事をしていない
まず前提を一つ確認させてください。
マネージャーが批判を受けるのは、異常事態ではありません。正常な状態です。
方針を決めれば反対意見が出ます。リソースを配分すれば不公平感が生まれます。フィードバックをすれば不満が出ます。これらはマネジメント業務の必然的な副産物です。
批判がゼロのマネージャーとは、「意思決定をしていない」でしょうし、「全員に迎合している」のでしょう。だからチームは何も変わらないし大した成果も出ない。そういうマネージャーのところでは何か「事件」こそ起きないものの、メンバーからも、会社からも、社会からも、感謝されることもないでしょう。
マネージャーは”批判されてなんぼ”の仕事でもあります。
「正しく嫌われる」技術
批判されてなんぼと言っても、"正しく嫌われる"ことが重要です。
以下の2つを行動のベースにすると良いでしょう。
1)感情移入関係を避ける
メンバーと「友達」になってしまうと、厳しいことが言えなくなります。
あるメンバーと距離が近くなりすぎた時期、パフォーマンスの課題を感じながらもはっきりフィードバックができなかった。「関係が壊れるのが怖い」という感情が先に立ったのです。そのメンバーは課題に気づく機会を失い、成長が遅れました。「冷たくしろ」ということではありません。「関係の種類を意識的に設計する」ということです。仕事仲間としての適切な距離感を保つことで、タフなフィードバックや要求が可能になります。それが、正しく嫌われるということです。
友達付き合いをしてしまえば、フィードバックもできないし、単に感情的に恨まれるだけで、それがメンバーやチームの発展に有益だとは思いません。
2)心から気にかけながら、はっきり伝える
「気にかけていること」と「はっきり伝えること」は矛盾しません。相手を傷つけまいと遠回しに伝えた結果、何が問題なのか伝わらない。行動が変わらない。マネージャーはフラストレーションを溜める。一方、はっきりと伝えたケースでは、最初こそメンバーの表情は曇ります。しかし課題が明確になることで行動が変わり、成長が加速する。「あのとき言ってもらえてよかった」と感謝されることも珍しくありません。ここで問われるのは、伝え方のテクニックよりも前に、相手への関心が本物かどうかです。テクニックだけを磨いても、関心のなさは必ず透けて見えます。
気にかけているけど何も言わない「忖度」、気にかけてないけどはっきり言う「攻撃」、気にもかけないし何も言わない「無関心」。いずれもメンバーのためにはなりませんし、それで嫌われても正しい嫌われ方ではありません。
この2つは「嫌われない方法」ではありません。嫌われたとしても、その行為に正当性と誠実さがあるので、メンバーの動き、その先のチームの成果に実効性があるものになります。
立ち返る2つの心得
どれだけ頭で理解し、そして正しい行動をしたとしても、私たちは感情ある人間です。心が折れかける瞬間は必ず来ます。
批判が重なったとき、孤独を感じたとき・・・立ち返るべき心得があります。
1)メンバーの人生に影響している
マネージャーの一言は、メンバーのキャリアや成長に直接影響します。「嫌われたくない」から言うべきことを飲み込んだとき、被害を受けるのはメンバー自身です。改善のチャンスを知らされないまま時間が過ぎ、気づいたときにはキャリアの選択肢が狭まっている。目の前の感情よりも、3年後・5年後のメンバーの姿を想像できるか。嫌われる覚悟とは、メンバーの未来に対する責任感の別名なのだと思います。
2)与え続ける、見返りを求めない。
「ここまでやっているのに、なぜわかってくれないのか」この思考が出てきたら危険信号です。見返りを前提にすると、返ってこなかったときに心が折れます。感謝されなくても、理解されなくても、与え続ける。それはマネージャーという役割を全うするための覚悟の表明です。その姿勢は、すぐには見えなくても、着実にチームの信頼の土台になっていきます。
おわりに
嫌われることや、辞めてしまうことを恐れてメンバーのご機嫌取りをしたり言うべきことを言わなかったりすることは、結果メンバーの成功には向かっていません。そういうマネージャーが最終的には一番メンバーがついてこないのは、私としては確信に近いです。メンバーにとっては、そのマネージャーが”自分を成功させる人ではない”とわかるからです。
メンバーが一番欲しいのは、あなたの愛想ではなく、自身の成功です。そして、メンバーの成功が欲しいのは会社も全く同じです。メンバーが成功すれば、会社が成功する。
メンバーから嫌われようがどうしようが、会社の成功のためにメンバーを成功させることがマネージャーの仕事です。その1点を見ます。
正しく嫌われた結果、最終的には実はものすごく感謝されるはずです。その人の人生もよりよくなります。
覚悟と忍耐の先に何ものにも変え難い喜びがあるのがマネジメントという仕事です。その希望が助けになるはずです。
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