「任せられる人がいない」と感じるとき、実は任せられる人がすでに社内にいる可能性があります。本記事では、EVeMの「マネジメント100の型」から、業務過多で本質的な仕事に集中できないマネージャーが、"任せられない"状況を改善する方法を3つの観点で解説します。
この記事でわかること
- 「任せられない」の背景にある心理的なブレーキ
- 「合格点」と「撤回条件」を使った任せ方
- 成長機会としての委譲と、外部リソース活用の選択肢
「任せられる人がいない」は本当か?隠れた心理的ブレーキ
どれだけ忙しくても、「任せられる人がいないから」と"自分がなんとかする精神"で乗り切ろうとしてしまうマネージャーは少なくありません。
しかしその背景には、「任せられる人が本当にいない」のではなく、「失敗させたくない」「自分がやった方が早い」といった、マネージャー自身の"心理的なブレーキ"が隠れていることもよくあります。
マネージャーが忙殺されて本質的な仕事に向き合えない状況をどう改善できるのか。「そもそも、任せられる人は本当にいないのか?」という視点も交えながら、次の3つの観点で考えていきましょう。
- 合格点で判断しているか
- 「成長機会」として任せてみないか
- 外部リソース活用の可能性はないか
観点1|合格点で判断していますか
"自分との比較"ではなく「その業務の合格点」で任せる
マネージャー自身が「120点で業務をこなせるプレイヤー」である場合、"自分が納得できるレベル"を引き渡しの基準にしてしまうことがあります。自分がやれば120点なのにメンバーに任せると80点になる。その"40点の差"が気になってつい手を出してしまうのは、よくあることです。
しかし大切なのは、任せるか否かを"自分との比較"で判断しないことです。「その業務における合格点」を基準に考えましょう。初めから120点である必要はありません。合格点を満たせるなら、任せられる人はすでに社内にいるということです。
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リスクは「撤回条件」の事前すり合わせで抑える
とはいえ、「任せる」という行為には勇気が必要です。リスクを抑えるためには、事前にメンバーとすり合わせを行い、「撤回条件」を定めておくことをおすすめします。撤回条件を提示しないまま、一度任せたものを途中で取り上げてしまうと、メンバーからの信頼を損ねる原因になりかねません。
注意点は、撤回条件の設計です。売上目標など、あまりに明確すぎるアウトプットを条件にすると、過度なプレッシャーを与え、チームのコンプライアンス違反やパニックを引き起こすリスクがあります。
- 良い例(能力・行動・マインドを条件にする): KPIが可視化されず不透明さが続く状態が改善されないとき/事業計画未達の際に有効な方針を立てられないと判断したとき/ユーザー満足を第一に考えるマインドが擦り合わないと判断したとき
- 良くない例(定量・定性アウトプットを条件にする): 売上XX円を達成できなければ担当を外れてもらう/XX機能の開発が間に合わなければ担当を外れてもらう
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任せた後は「あなたはどう思いますか?」と問い返す
任せた後、「どうしたらいいですか?」と相談を受けても、すぐに答えを渡さないことも重要です。質問のたびに答えを与えてしまうと、メンバーはいつまでも自分で意思決定できなくなります。
「あなたはどう思いますか?」と問い返し、メンバーの考えを聞いてその通りに動いてもらう。合格点を満たしているメンバーであれば、その仕事を「自分のプロジェクト」として主体的に進めてもらうことが大切です。
観点2|「成長機会」として任せてみませんか
メンバーの今のスキルでは難しいだろうと考え、「今できる範囲の仕事」ばかりを任せてしまうケースは少なくありません。
しかし、"今はできない仕事"であっても、あえて**「チャレンジゾーン」の目標として任せてみる**ことで、大きな成長のきっかけになることがあります。目標の水準とスキルの関係は、次の3つのゾーンで整理できます。
- コンフォートゾーン: 現在できる範疇にとどまり、安心は得られるが成長が望めない
- チャレンジゾーン: 手が届くギリギリの業務に向き合い、前向きでモチベーションが高い
- パニックゾーン: 能力を遥かに超え、手が届くイメージが全くつかず、心身ともに疲弊する
高すぎる目標はパニックを招く恐れがありますが、「届くかどうかギリギリの高さ」を意識した目標設定は、メンバーの潜在能力を引き出すうえで非常に有効です。
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観点3|外部リソース活用の可能性はありませんか
任せられる人材が本当にいないとき、つい正社員採用を急ぎがちですが、それだけが解決策ではありません。業務内容によっては、副業人材や業務委託など、他の契約形態でメンバーを迎えることも有効な選択肢です。
年々採用難易度が高まる中、正社員採用にこだわるとコストも時間も想定以上にかかるケースが少なくありません。主な外部人材の特徴は次のとおりです。
- 副業: 現職に勤めながら空いた時間で支援。フィーが比較的安く、採用につながる可能性もある。一方、コミットできる時期・工数は流動的で、本人にとって学びがない業務は受けてもらいにくい
- 業務委託: フィーに応じて一定の時間や役割をコミット。本人のWillに制約されずCanの業務を受けてくれる場合が多い。一方、同能力の正社員に比べフィーは高め
- 顧問: 豊富な経験・ノウハウ・人脈をブレーンとして提供。自チームでは乗り越えられない難題の突破に有効。一方、工数のコミットはなく、成果測定はしにくい
"正社員でなければ任せられない仕事なのか"を一度立ち止まって見直し、柔軟なリソース活用を検討することが、結果としてチーム全体の生産性向上につながります。
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よくある質問
Q1. 任せると品質が下がるのが心配です。
A. 判断基準を"自分との比較"から「その業務の合格点」に切り替えてみてください。初めから120点である必要はありません。合格点を満たせるなら任せ、足りない部分は撤回条件と定期的な対話でカバーします。
Q2. 撤回条件はどう設定すればよいですか?
A. 売上などの明確すぎるアウトプットではなく、能力・行動・マインドを条件にします。たとえば「KPIの不透明さが続く場合」「有効な方針が立てられないと判断した場合」などです。事前にメンバーとすり合わせておくことが信頼維持のポイントです。
Q3. スキル不足のメンバーに任せても大丈夫ですか?
A. 「届くかどうかギリギリ」のチャレンジゾーンであれば、成長機会として有効です。ただし能力を遥かに超えるパニックゾーンの業務は心身の疲弊を招くため、目標の水準を見極めて任せましょう。
Q4. 社内に本当に任せられる人がいない場合は?
A. 正社員採用だけでなく、副業・業務委託・顧問といった外部リソースの活用も選択肢です。任せたい業務の内容に応じて、最適な契約形態を検討してみてください。
まとめ
メンバーに"任せられない"状況を改善する要点は、次の3つです。
- 「任せられない」の背景にある心理的ブレーキに気づき、"自分との比較"ではなく「合格点」で判断する
- 撤回条件を事前にすり合わせてリスクを抑え、チャレンジゾーンの目標で成長機会として任せる
- 社内に適任者がいなければ、副業・業務委託・顧問など外部リソースも柔軟に検討する
次のアクションとして、いま自分が抱えている業務を書き出し、「合格点で考えれば任せられるもの」がないか棚卸ししてみてください。
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