楽しそうなプロジェクトの誘惑
金曜の夕方、Slackの通知が止まらないチャンネル。
新規事業のプロジェクトチャンネル。メンバーたちが次々とアイデアを投稿し、「これいけるんじゃない?」「来週プロトタイプ作ってみよう!」とスタンプが飛び交っている。その盛り上がりを、あなたは経営会議の議事録と向き合いながら、横目で見ている。
「……ちょっと覗くだけなら、いいかな」
そう思った経験、ありませんか。
その「一言」がチームを壊す
プレイヤーとして優秀だった人ほど、この衝動は強いものです。自分が手を動かし、アイデアを出し、仲間と議論していたあの高揚感。だから「楽しそうな現場」にどうしても引力を感じてしまう。
しかし、その「ちょっと一言」が、チームの自走を壊す起点になっていることが多いです。
よくある光景があります。マネージャーが「オブザーバーとして」プロジェクトの定例に参加し始め、最初は皆に歓迎される。ところが、マネージャーが一言発した瞬間から会議の空気が変わる。メンバーの発言量が目に見えて減り、「上の顔色を見てから」という空気がじわじわ広がっていく。
マネージャーが「ちょっと顔を出した」だけで、チームのオーナーシップは毀損されるのです。
議事録を読むだけでいい
マネージャーの存在そのものが、メンバーの主体性を奪う側面があります。
「一言くらいなら」と思うかもしれません。しかしその一言が持つ重力は、本人が思っている以上に大きいです。経営者やマネージャーが発言すると、メンバーにとってはそれが「上からの指示」になる。精神的ヒエラルキーは、何気ない一言から生まれていきます。
だから、メンバー同士が楽しんで成果を出しているプロジェクトは、一人さみしく議事録を読むだけでいいのです。何も言わない。コメントもしない。把握だけする。
プロジェクトが完了してメンバーが「自分たちだけでやり切れました!」と言える状態こそが、マネジメントの完成形です。その誇りと自信が、次の自走を生みます。マネージャーが手を出した瞬間、その成功は「マネージャーのおかげ」になり、メンバーの自信にはなりません。
マネージャーが介入し続けているチームは、マネージャーが抜けた瞬間に機能しなくなります。自走するチームを作ることこそが、持続的な成長です。
そういう場を作れたこと自体が、マネージャーとしての功績です。ただ、誰もそれに気づいてくれない。それがマネジメントというものです。
誰にも気づかれない、それが最大の功績
これは孤独な仕事です。
Slackが深夜まで盛り上がっている横で、自分は取締役会の資料を一人で作っている。「自分はこのチームに必要とされていないのでは」という感覚が頭をよぎることもあるでしょう。
でも、はっきりと言えます。「首を突っ込まなかったこと」が、マネージャーとしての最大の功績です。
誰にも感謝されない。誰にも気づかれない。しかし「介入しなかった」という判断こそが、チームの自走と成長を最大化するマネジメント業務です。
今日、Slackで楽しそうに盛り上がっているチャンネルを見かけたら、コメントを書く手を止めてください。代わりに議事録を開いて、黙って読んでください。そして、何も言わないでください。
その「何もしなかった」が、あなたの今日一番の仕事です。
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